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地方DX化による「自己完結型の経済圏の構築」が日本の経済危機を救う。

トピックス 2021.12.25 地方DX化による「自己完結型の経済圏の構築」が日本の経済危機を救う。

今回は、セキュリティ通信のインタビュー企画2回目の後編です。地方創生に目を向け、IT人材の確保と育成を積極的に行っている株式会社BTM代表取締役社長兼CEOである田口さんに地方DX化についてお話をお伺いします。

株式会社BTMは「地方創生企業」としてリモート開発を強みに「日本の全世代の活性化」をミッションに掲げ、全国のエンジニアと協力し、地方DX化を進めてきました。

政府が推進する「地方創生」の背景には、政治・経済・文化・人口など、社会における資本・資源・活動が東京を中心とした関東圏に一極集中している現状を是正し、地方に人口を分散させることで、人口減少に歯止めをかける狙いがあります。

前編でお伺いした「地方DX化の現状と課題」をもとに、DX化を推進する具体的な方法を長野県の開発拠点である『イノベーションハブこもろラボ』開設に至るまでの経緯などを踏まえてご教授頂きます。

地方に必要なのは、周囲を巻き込みながら主体的に行動する「自律」した人材。

今後、地方DX化を担う人材として望ましい資質

セキュリティ通信:前編では、地方のDX化に対する危機感の希薄さ、人材確保の難しさなど様々な課題があることが分かりました。今後、地方DX化を担う人材として望ましい資質などあれば教えてください。

田口さん:技術面はもちろんですが、最も重要なのは「自律」した人材であること。誰かの指示を待つのではなく、周囲を巻き込みながら、自ら学び、行動するパワーのある人を求めています。

環境整備などが追いついていない地方では、都市圏では想像もできないような困難な場面に遭遇する機会が多々あります。さらに、リモートという環境下では、自らが助けを求めなければ、周囲は手を差し伸べてくれません。

地方で仕事をするためには精神的な強さなども求められる

セキュリティ通信:地方で仕事をするためには、技術だけでなく、精神的な強さなども求められるのでしょうか?

田口さん:そうですね。指示された仕事を仕上げれば良いという受身的なスタンスではなく、周囲を引っ張っていくような積極性や困難に出会っても周囲の仲間と協力して乗り越えられるようなコミュニケーション能力を重視しています。

そのような優秀な人材を地方から逃さない、そして、都市圏から喜んで来てもらえるような自治体や企業に変貌すべく、挑戦を続けていきたいと考えています。

地方の未来を担う人材を育成する『イノベーションハブこもろラボ』の挑戦。

『イノベーションハブこもろラボ』が開設された経緯

セキュリティ通信:BTMさんは全国のラボを拠点とし、企業の育成に力を入れておられますが、今回、長野県小諸市を拠点とする『イノベーションハブこもろラボ』が開設された経緯などについて教えてください。

田口さん:弊社では、全国の地方自治体にDX化を推進する提案を行っています。そのような取組みを続けるなかで、「是非、DX化を進めていきたい」と声をあげてくださったのが小諸市の方々です。

2019年に創設された、グローバルに展開できるIT人材の集積と革新的なITビジネスの創出を支援する「信州ITバレー構想」とニーズが合致したのも要因の一つです。

IT教育を基礎から行う『イノベーションハブこもろラボ』

『イノベーションハブこもろラボ』では、「IT人材の確保・育成」を目指し、IT教育を基礎から行っていきます。小諸市にはIT企業が1?2社しかないので、新卒でIT企業に就職する選択肢がありません。ほとんどの学生は卒業後、飲食や製造業に従事するか、小諸市を離れて就職してしまうのが現状です。

県外に流出してしまう人材を県内に留めると同時に、飲食や製造業など如何なる業界であっても、ITの知識を業務に取り入れて行くことが必要不可欠です。まず、ITに興味を持っていただくことから始めて、将来的には地域を担うようなITエンジニアの育成に取り組んでいけたらと考えています。

「地方に貢献したい」純粋な想いをつなぎたい。移住に捉われないフレキシブルな働き方を提案する。

地方DX化の即戦力となる人材が地方に移住する場合に留意すべきこと

セキュリティ通信:2020年には、リクルート住まいカンパニーが「職住融合」というトレンドを発表し、今後はテレワークを前提とした家選びや街選びが主流になっていき、地方で移住する人たちも増えてくることが予想されます。

例えば、実績があるWebマーケッター、開発のみならず高度なセキュリティ知識と技術を持つエンジニアなど、地方DX化の即戦力となる人材が地方に移住する場合、留意すべきことはありますか?

田口さん:そうですね。IT技術に精通した優秀な人材が地方に移住して、自ら起業して新しい事業を創造して頂けるなら大歓迎です。

ただ、前回もお話したように、地方自治体や地元企業に就職する場合、給与面や仕事内容に満足できるかどうかという問題もあります。また、受け入れる側の地方自治体や企業側も、労働単価の高い都市圏の人材に対する高額な給与を支払えるのかという不安もあります。

さらに、DX化に対する危機感が希薄なので、ITに特化した優秀な人材を求めている訳ではないのが現状です。

ITのプロフェッショナルであるシニア世代の方々もで活躍することが可能

セキュリティ通信:「移住」して「地元企業に就職」になると、ハードルが一気に上がるのですね。

例えば、都市圏では、定年後に移住して地元に貢献することを視野に入れた知識や経験豊富なITのプロフェッショナルが多いようです。そのようなシニア世代の方々が、今からリモートで活躍することは可能でしょうか?

田口さん:もちろん、地方ではそのような人材を必要としています。例えば『イノベーションハブこもろラボ』でも、農作物のネット販売や小中学校のインフラ整備で学力アップなど様々な企画があります。是非、今までに培って来た経験や知識を活かして頂けたらと考えています。

「移住」して欲しいという地方自治体が多い

ただ、先程お話しした通り、受け入れる側は、助成金などの問題があり、リモートではなく「移住」して欲しいという地方自治体が多いように感じます。

そもそも、採用人数や企業という箱に対して支払われる今の助成金制度は、リモートが当たり前の今の時代にマッチしているとはいえません。昔ながらの助成金による誘致に頼っていても、優秀な人材を地方に呼び寄せることもできません。

助成金改正を視野に入れつつも、ラボを拠点として、地方自治体に集約された企業の情報を基に、「地方に貢献したい」という優秀な人材をつなぎ、フレキシブルな働き方を提案することができればと考えています。

地方が持つ高いポテンシャルを掘り起こせば「自己完結型の経済圏」は必ず実現する。

国際競争力ランキングも下降を続ける日本の労働市場について

セキュリティ通信:労働人口が減少し、国際競争力ランキングも下降を続ける日本の労働市場をどのようにお考えですか?日本の理想像のようなものがあれば教えてください。

田口さん:今後、地方に求められるのは、自己完結型の経済圏を築くことです。「何かあれば東京の会社に頼ればよい」という意識を改め、自分達には高いポテンシャルがあることを自覚し、それを開発することが重要です。

地方には眠っている財産があります。そこには、地方独自が長い年月をかけて培ってきたノウハウや産業、豊かな自然があります。それらの武器を最大限に生かすことで「自律」は叶うと思います。

特に、地方では横の伝播性が高いので「あの地域で成功したなら自分達も必ずできる」と一気に拡大します。とにかく、今は成功体験を積み重ねることが大切です。

最終的には、行政運営の管理から各種サービスの提供、法律の執行まで地方独自で行う、アメリカの州のような役割を地方が担えることが理想です。地方の自律こそが、新しい力を生み出し、暗礁に乗り上げつつある日本経済活性化の柱になると信じています。

セキュリティ通信:最後に田口さんが描くこれからの地方の未来像や理想について教えてください。

田口さん:今後、リモートがますます活用されることで、都市圏に集中していた情報が地方に行き渡り機会が増えることで、地方の優秀な人材が活性化されることでしょう。

その一方で、都市圏に住みながら、いつかは生まれ育った地元や憧れの土地に移住して仕事をしたいけれど、なかなか踏み切れない方も多いと思います。

弊社では、地方自治体と協力し、地元の優秀な企業や人材の豊富なデータを最大限に活用することで、地方と都市圏を繋ぐ架け橋になりたいと思っています。

既存の常識に捉われることなく、これからIT教育を学ぶ若者から、日本のIT創世記を支え育て上げたシニア層に至るまで全ての世代までが「希望」を持って輝ける場所を創造していきたいと考えています。

終わりに

リモートを通じたフレキシブルな働き方を提供することがDX化を加速させる

Key Point

・地方DX化を担う人材として望ましい資質は「自律」。都会では想像もできないような困難な場面に遭遇する機会が多い地方では、指示を待つのではなく、周囲を巻き込みながら自ら学び、行動できる人材を求めている。

・グローバルに展開できるIT人材の集積と革新的なITビジネスの創出を支援する「信州ITバレー構想」と合致した経緯もあり、開設された「イノベーションハブこもろラボ」。『IT人材の確保・育成』を目指し、IT教育を基礎から学ぶ場を提供。地域を担うITエンジニアの育成に取り組んでいる。

・都会で暮らす人々が地方に移住する場合、地方の企業での給与面や仕事内容で満足できるかどうかが課題となっている。「移住」や「就職」に固執しない、リモートによるアルバイトなどフレキシブルな働き方も選択肢のひとつである。

・地方の自律こそが、新しい力を生み出し、日本経済活性化の柱となる。行政運営の管理から各種サービスの提供、法律の執行まで地方独自で行う、アメリカにおける「州」のような役割を地方が担えることが理想。

いかがでしたでしょうか?

株式会社BTMの田口さんに、前編と後編の2度に渡って、地方DX化についてお伺いしてきました。

後編となる今回は、前編でお伺いした地方DX化の現状と課題をもとに、DX化を加速させる具体的な方法についてご教授頂きました。

今後、DX化が進まなかった場合、2025年には巨額の損失を被る恐れがある日本経済。少子化や労働人口の減少など長期的な展望を持ち、次なる一手を打つべき時がきています。

株式会社BTMは、地方に目を向け、希薄な危機感を覚醒させ、機会を提供し、労働力を高めるために、眠れる価値である「人財」を活性化させ「自己完結型の経済圏」を築くことを目指し、中央集権型で行き詰まった経済を活性化させる挑戦を続けてきました。

地方が生産性を上げ、競争力をつけることが急務の課題である一方、「Withコロナ」「Afterコロナ」を通じて、都会から移住して「地方に貢献したい」と考える人が増えています。

既存の常識にとらわれず、リモートを通じたフレキシブルな働き方を提供することが、優秀な人材確保につながり、DX化を加速させるでしょう。

TEXT:セキュリティ通信 編集部
PHOTO:iStock

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