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地方DX化の推進が日本経済を救う。鍵を握るのは雇用創生と「リブランディング」

トピックス 2021.12.20 地方DX化の推進が日本経済を救う。鍵を握るのは雇用創生と「リブランディング」

セキュリティ通信では、Web・IT業界をリードするスペシャリストの方々にインタビュー企画を行っています。2回目となる今回は「地方創生」に目を向け、IT人材の確保と育成を積極的に行っている株式会社BTM代表取締役社長兼CEOである田口さんから、地方におけるDX化推進とセキュリティ対策について前編と後編に渡ってお話をお伺いします。

総合開発法に基づき国が作成する「全国総合開発計画」によれば「地方」とは、東京圏、関西圏、名古屋圏の三大都市以外の地域。地方の中でも、金沢市や浜松市など県庁所在市または人口が約30万人以上のどちらかに該当する「地方中核都市」。生活圏の中心で人口10万人程度を「地方中心都市」5万人以下を「地方中小都市」と定義されています。

日本では、三代都市圏はもちろん、地方都市においても、交通網やインフラの整備が進んでいるにも関わらず、日本の全人口に占める「東京圏」の人口は約3割。外資系企業本社の86%、資本金10億円以上の企業の59.3%を「東京圏」が占めています。

政府が推進する「地方創生」及び「地方DX化」にはヒト・モノ・カネが「東京圏」に一極集中している現状を是正し、人口を分散させることで、人口減少に歯止めをかける狙いがあります。

株式会社BTMは、「日本の全世代の活性化」をミッションに掲げ、リモート開発を強みに、全国のエンジニアと協力しながら地方のローモデルとなる企業の育成に力を入れています。

2021年6月には、長野県が掲げる「信州ITバレー構想」とニーズが合致した小諸市と連携協定を締結し「イノベーションハブこもろラボ」を開設したことが話題になりました。

前編となる今回は、地方DX化の現状と課題、地方に眠る優れた人財や地域の魅力を引き出す方法についてお伺いします。

「2025年の崖」に日本を転落させない。地方の希薄な危機感を覚醒させDX化を加速する。

DX化の進捗状況について

セキュリティ通信:2021年9月にデジタル庁が発足し、地方行政のDX化が本格的に進められています。BTMさんは様々な地方自治体や中小企業と関わりがあると思いますが、DX化の進捗状況について教えて下さい。

田口さん:弊社は、全国の地方自治体や地元企業と連携しながら様々な事業に取り組んでいますが、残念ながら、進捗は思わしくありません。東京が10とするなら地方は1?2程度という状況です。しかし、悲観するのではなく、地方は大きなポテンシャルを秘めていると前向きに捉えています。

DX化が進まない原因のひとつとして考えられるのが、首都圏と地方の通勤手段の違いです。地方では自家用車による通勤が主流で、満員電車に乗る機会はほぼありません。コロナ禍であっても通勤で密になることが少ないため、テレワークに切り替えようという動きが鈍かったように感じます。

進捗が思わしくない要因

セキュリティ:信:地方自治体や地元中小企業におけるDX化が急務であるにも関わらず、進捗が思わしくないのは、ネットワークの環境整備など技術的な要因と意識的な要因のどちらでしょうか?

田口さん: 意識的な要因が多くを占めていると考えています。地方では、DX化を推進しないことによる危機意識が首都圏と比較して希薄なように感じられます。

経済産業省による「2025年の崖」で報告されているように、今後、日本におけるDX化が進まなかった場合、最大で12兆円という巨大な損失が発生します。

地方でのDX化推進

しかし地方では、日本経済に対する将来的な危機感より、DX化推進による従来の仕事が喪失してしまうことへの懸念が強いようです。ただ、日本全国どの地方自治体や企業であっても、長期的な展望と危機感を持っている方は必ずいらっしゃいます。

その方達と手を携えて、周囲を巻き込みながら挑戦を続けていくことは充分可能です。人間同士の繋がりを大切にしながら、信頼関係を築き、泥臭くても、一歩づつDX化を進めていきたいと考えています。

セキュリティこそ地方DX化の要。磐石なインフラ整備と人材確保が急務。

地方自治体や中小企業のセキュリティ対策

セキュリティ通信:現在、日本全国でサイバー攻撃による被害が多発しています。セキュリティが厳重な大企業よりも、セキュリティ意識が希薄な地方の中小企業は攻撃の対象になりやすい傾向があるようですが、御社が携わっている地方自治体や中小企業ではどのようなセキュリティ対策をされていますか?

田口さん:地方によって差はありますが、自治体や企業では全体的にIT化そのものが進んでいません。顧客情報や請求処理、重要機密事項など、現在も紙ベースで業務が進められている場合には、サイバー攻撃のターゲットにされることは非常に稀です。

しかし、今後、地方自治体や企業でDX化を加速させていく場合、ウイルスソフトが正しく導入されていなかったり、セキュリティリスクに対応できる技術者やチームを配置していなければ、データの情報漏洩やウイルス感染など多大なリスクが想定されます。

DX化はインフラ環境の盤石なセキュリティが土台にあることが重要

DX化はシステム開発ばかりに目が向きがちですが、サーバーやネットワークなどインフラ環境の盤石なセキュリティが土台にあることが何よりも重要です。

組織のマネジメントとして、セキュリティ管理体制が国際基準に準拠していることを示すISMS(情報セキュリティ管理システム)の認証を取得するだけでなく、策定した計画を着実に運用することが求められます。そのため、拠点となるラボには専門的なセキュリティ技術者を必ず常駐させています。

DX化による雇用創出。培ったノウハウと資源を活用し唯一無二のサービスを生み出す。

DX化による雇用創出。培ったノウハウと資源を活用し唯一無二のサービスを生み出す。

セキュリティ通信:DX化によって、請求書からクラウドサービスの活用、リモートワークに至るまで、働き方が多様化し企業の競争力が高まる一方、従来の雇用が失われることへの懸念もあるようです。BTMさんではどのような対策を考えておられますか?

田口さん: そうですね。確かに、DX化によって、従来行っていた仕事はなくなってしまう可能性があります。例えば、今まで10人で行っていた作業がDX化を推進することで、1人で可能だと判明した場合、残りの9人の雇用をどう守るのかという問題が生じます。

DX化には二つの型がある

弊社では、業務の効率化によって生み出された時間と人材を生かして「今の会社の強みを創り出す業務に従事」して頂きたいと考えています。

そもそも、DX化には二つの型があります。一つ目は現状の問題を見極めて良い方向に導く「課題解決型」、二つ目は新しい価値を創造する「事業創立型」です。

「課題解決型」で業務を効率化し、「事業創立型」で今まで企業や地方自治体で培ってきたノウハウを活かせば、世界で唯一無二の「新しいサービス」が生み出せると信じています。

「リブランディング」で圧倒的な魅力を再発見する。今いる優秀な人材を逃さない。

地方のDXが本格的に進んだ場合のライフスタイル、働き方や雇用の変化について

セキュリティ通信:日本の自治体を支える職員の数は、20年間で50万人以上が削減されているにも関わらず、介護、空き家、待機児童、少子高齢化など解決すべき問題が増加する一方で、コロナ禍によるテレワークの浸透により、都会から地方へ移住する人たちも増えています。地方のDXが本格的に進むとライフスタイル、働き方や雇用はどのように変化するとお考えですか?

田口さん:確かに、コロナ禍の影響で、地方に移住される方が増加傾向にありますが、多くの方々は都市圏の会社に所属しテレワークを行っています。

地方に仕事がないわけではありませんが、給与面や業務内容で満足して頂くことは恐らく厳しいでしょう。多くの優秀な人材が首都圏から移住しても、地方自治体や地元企業とはほとんど接点がありません。

地方自治体や地元企業は、優秀な人材が就職したいと考えるような魅力をアピールする必要がある

今後、地方自治体や地元企業は、優秀な人材が就職したいと考えるような魅力をアピールする必要があります。

そのために、弊社では、事業形態や企業価値などを今一度見直す「リブランディング」を勧めています。優秀な人材を地元企業に取り込んでいくためには、その地方唯一の「ここにしかない魅力と価値」を打ち出していくことが重要であると考えています。

セキュリティ通信:最近は、株式会社スノーピーク(新潟県三条市)、株式会社星野リゾート(長野県北佐久郡軽井沢町)など地方を拠点とする魅力的な企業が増えてきました。リブランディングを成功させ、地方を活性化させる秘訣とは何でしょうか?

田口さん:地方自治体や企業は、高いポテンシャルがあるにも関わらず、上手に引き出せていないように感じます。地方には、唯一無二の自然や地場産業、素晴らしい人材が必ず眠っています。

「地方に貢献したい」という高い志を持って移住された全ての方々に「是非この会社で働きたい」と思ってもらえるように、地方の魅力を分かりやすく伝えることが地方を活性化させDX化を加速させる秘訣だと思います。

終わりに

地方DX化を牽引する株式会社BTM

Key Points

・コロナ禍で首都圏を中心とする大企業のDX化が加速する一方、地方では東京の1~2割程度に留まっている。

・地方でDX化が浸透しない原因として、将来的な危機感よりも、従来の雇用喪失への懸念が強いことが考えられる。

・システム開発のみならず地方DX化では、サーバーやネットワークなどのインフラ整備、ISMS(情報セキュリティ管理システム)認証を取得するだけでなく、策定した計画を着実に運用することが求められる。

・DX化には業務を効率化する「課題解決型」と新しい価値を創造する「事業創立型」がある。「事業創立型」のDX化により、今まで培ってきたノウハウを活かした「新しいサービス」を生み出すことが求められる。

いかがでしたでしょうか?
少子化が進み、労働人口が減少し、下降を続ける日本経済。

今後、DX化が進まなかった場合、2025年には12兆円という巨額の損失が発生することが懸念され、地方のDX化が急務となっています。

地方DX化を牽引する株式会社BTMは、地方創生に目を向け、全国のラボを拠点とし、地方自治体や企業と連携しながら、IT人材の確保と育成を積極的に行っています。

「Withコロナ」「Afterコロナ」を通じて、地方への移住を検討する人々が増加傾向にある今、地方に眠る自然や地場産業、素晴らしい人材に目を向けて、地方自治体や企業が持つ唯一無二の魅力を分かりやすくアピールすることが、地方DX化を加速させる鍵となるに違いありません。

次回、後編は株式会社BTM代表取締役社長兼CEOである田口さんから、地方DX化を加速させる具体的な方法について「イノベーションハブこもろラボ」開設の経緯などを踏まえてじっくりお聴きますので、ぜひご期待ください。

TEXT:セキュリティ通信 編集部
PHOTO:iStock

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