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話題のClubhouseのセキュリティとプライバシーリスクとは?

トピックス 2021.06.04 話題のClubhouseのセキュリティとプライバシーリスクとは?

2021年になってすぐの1月下旬に登場した、話題のSNS、「Clubhouse」。

 それは、電話番号をIDとしリアルタイムの人間同士の会話を楽しむという、インターネットの一番の特徴であった匿名性の世界から少しだけ踏み出したものでした。

 Clubhouseは驚きをもって迎えられ、TwitterやFacebookなど文字情報のやり取りが中心であったそれまでのSNSの世界に新しい潮流を巻き起こしたことは確かです。

 しかしながら最近は、このClubhouseの危険性やマイナス面が各方面から続々と指摘されるようになってきています。

 この記事ではClubhouseとは何かということと、そのセキュリティとプライバシーについて解説していきます。

Clubhouseとは

Clubhouseとは

 Clubhouseは、元グーグル社員のポール・ダヴィソンとローハン・セスが2020年2月に創業した会社「アルファエクスプロレーション(Alpha Exploration)」で開発されました。

アメリカでは2020年4月にサービスが開始されています。

日本では2021年1月23日にβ版の使用が開始されました。なお、対応しているのはiOS用のみで、Android用は公開されていません。

人気の秘密とは

 人気の秘密とは

「世界中の人が気軽に話し合える場所を提供する」ことをコンセプトとして、友人やその友人とラジオのように会話を楽しんだり、飛び入り参加をしたりとなかなか楽しそうな内容となっています。

芸能人など著名人のトークルームを見つけられるのも楽しみの一つで、公開されるや否やたちまち話題になったのです。

芸能から政治に至るまで様々なトークルームが存在し、普通なら出会える可能性のない人との意見の交換ができ、これによって視野が広がるのも魅力の一つと言えるでしょう。

Clubhouseの規約内容

Clubhouseの規約内容

Clubhouseの利用規約は、なかなかに厳しいもので、重要なもののうちいくつかをを簡単に箇条書きにすると次の通りです。

●   18歳以上であること。
●   本名を登録すること。(芸能人に限り芸名が可能)
●   知的財産権を侵害するコンテンツを提示しないこと。
●   トークルーム内の会話を録音、メモ等で記録してはいけない。
● 公序良俗に反する行為は禁止

 文字によらないSNSであることの良いところは後に記録が残らないという点で、発言に責任が持てる大人のコミュニティーを作って、それを守ろうとしていることがうかがわれます。

またClubhouseの重要な特徴の一つとして、すでにサービスを利用しており、しかも電話帳のリストにある人から招待コードをもらわないと利用を開始できないということがあります。

このように一見、堅牢なセキュリティ対策に見える仕様です。ところが、意外と多くの問題が出てきているようなのです。

Clubhouseの危険性

Clubhouseの危険性

Clubhouseの利用を巡っては実際に様々な困った行為をする者の存在や、情報セキュリティ上の危険性が指摘されています。これらを解説していきましょう。

招待詐欺の可能性

Clubhouseに入りたい人がいても、誰かに招待してもらわないと入れない状況があります。

もともと、知り合いの紹介でしか入れない仕様なのですから当然なのですが、どうしても覗いてみたいと思う人は少なからずいるわけです。

そこで、Twitterなどで「だれかClubhouseに招待してくれませんか」などの投稿が増えました。

これを逆手にとって、ヤフオクやメルカリで招待枠を販売する人が現れました。こういうものの売買行為もヤフオクやメルカリ上の規約に触れそうなものですが、これはもっと別の危険性をはらんでいます。

招待詐欺の可能性

招待枠は形のないただの文字列です。これは先にお金を支払わせた後で、ブロックして姿をくらますなどの詐欺が可能だということです。

このような事件はClubhouseが流行り始めた2021年1月下旬ごろ、盛んに発生していたようで、さすがに話題になったため今は下火ですが、今後やり方を変えて再度発生しかねません。

電話番号漏洩の可能性

電話番号漏洩の可能性

Clubhouseの招待枠は「invite text」といってただの文字列ですが、これを送信してもらうには相手に電話番号を教える必要があります。

知り合いならよいのですが、赤の他人に電話番号を教えることは問題があるとかないとか言う以前に直接自分で個人情報を漏洩させる行為です。

電話番号のリストは犯罪者の間で売買される恐れがあり、フィッシング詐欺などに利用されてしまう可能性が大いにあります。

ショートメールで怪しいリンク付きの妙なメッセージが来たことはないでしょうか。

それは、電話番号がどこかで漏洩している証拠です。

差別・誹謗中傷・ヘイトスピーチの温床となる

差別・誹謗中傷・ヘイトスピーチの温床となる

Clubhouse内にはRoomという閉鎖された空間が用意されています。

物理的な空間ではないため、メンバー以外の誰にも聞かれることなく、何を発言しようと一向に構わない環境が出来上がることになります。

たとえば、特定の人種や民族、性的マイノリティについての悪口が閉じた空間で大勢の人によって連日繰り返されていたとしても、誰にも聞かれることなく誰からも非難されることもないため、延々と続くことになります。

こうしたことが良しとされるのか果たして疑問ですが、今のところ対抗手段がありません。

一応、Clubhouseの規約ではこうした公序良俗に反する行為は禁止されてはいますが、今のところその規約を有効に機能させる手段が見えていません。

ゴースト現象の発生と“あらし”の存在

ゴースト現象の発生と“あらし”の存在

日本でサービスが始まった当初の現象ですが、Clubhouseで「ゴースト」という現象が発生していました。

 「ゴースト」とはアイコンが存在しない状態で会話中のルームに参加しているユーザーのことです。

ルームのメンバーから見えない状態で盗み聞きをしている人が出現することがあるということです。

ついついプライベートな内容を話していたりした場合を考えると恐ろしいことです。

また黙って聞いているだけではなく、会話に割り込んできて妨害するなどの“あらし”行為もあったといいます。また、ゴーストになってしまった人のマイクがONになっていて騒音が入り込むため邪魔になるという場合もあり得ます。

会話の秘密が守られない

会話の秘密が守られない

Clubhouseの利用規約では録音はもちろんメモも禁止になっており、見かけ上会話の秘密が守られているような印象があります。

しかしながら、芸能人も多く参加しており、マスコミ関係者もいる中でこのようなことがしっかり守られるという保証があるのでしょうか。

Twitterのツイートの場合は、芸能人の発言は報道されることが普通なのですが、Clubhouse内の会話を報道することは規約上NGのはずです。

ここのところを履き違えたマスコミが、Twitterと同じように考えたのか、Clubhouse内で聞いた芸能人の会話の内容を週刊誌の記事として報道してしまうということが起こりました。

マスコミがClubhouse内で聞いた芸能人の会話の内容を週刊誌の記事として報道してしまう

Twitter上では、このClubhouseのルールについて様々な議論が巻き起こりましたが、芸能人である以上、報道されてしまうことはやむを得ないという論調が多いような印象でした。

芸能人である以上、報道されることは意識して使うべきだというのです。「それが嫌なら使うな」という論調まで見られました。

報道されることを気にして使用するClubhouseはあまり意味がないようにも思えますが、守られるはずの会話の秘密がこのような状態では、存在意義や利用価値そのものを再考せざるを得ません。

APIが中国から提供されている点についての不安

APIが中国から提供されている点についての不安

音声でやり取りするClubhouseは、そのAPI(アプリケーションプログラムインターフェース)が上海にあるAgoraという企業のものを使用していることが知られています。

ClubhouseのAgoraへの通信はIDが平文で流れており、これと音声を組み合わせれば、誰が誰とどのような発言をしていたかが中国のサーバーで解読可能な状態にあったというのです。

上海のAgora社はこの報告を否定しましたが、中国当局の命令があれば提供させられてしまう可能性があるわけで、極めて不気味です。

Clubhouseの提供会社、アルファエクスプロレーション社はこれに対する対策として暗号化装置を早急に設置するとしましたが、果たして本当に自分の発言内容が中国に漏れていないのかどうかについては、確認のしようがありません。

終わりに~今後のClubhouseはどうなっていくのか

これからのClubhouseのセキュリティ上の諸問題の解決を願い、注目してみる価値はある

これまでにない新しい形のSNSであるClubhouseは、まだ始まったばかりですが、このようにいろいろなセキュリティ上の不安な要素があることが指摘されてきました。

Clubhouseの使用にあたっては慎重な態度をとらざるを得ないと思う人が出てきても仕方がない状況と言えるでしょう。

しかしながら、普通に暮らしていれば、会って話すことなどないであろう人とのコミュニケーションが直接行えるSNSというのは、人々の視野を広げる意味で画期的なことには違いありません。

Clubhouseに限らず、出たばかりのサービスや商品にはこのようなトラブルはつきものです。出てきた問題は、工夫や努力で乗り越えていく上で安全で有益なものになっていくのではないでしょうか。

これからのClubhouseのセキュリティ上の諸問題の解決を願い、注目してみる価値はありそうです。

【関連リンク】

音声SNSのClubhouse、拡大続く 招待制巡り詐欺も
(日本経済新聞 2021年2月6日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ0527U0V00C21A2000000/

 人気急上昇の音声SNS「Clubhouse」は、セキュリティとプライヴァシーの課題を解決できるか(WIRED)
https://wired.jp/2021/03/01/clubhouse-privacy-security-growth/

 文字ではなく“声“で人間味のある交流を Clubhouseが生まれたワケ(Itmedia NEWS)
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2102/01/news101.html

 Twitterより(藤田ニコル(にこるん)2021年2月8日
https://twitter.com/0220nicole/status/1358653152048807936

 【かんたん図解】Clubhouse(クラブハウス)とは? 使い方・やり方と注意点をわかりやすく解説(Insta lab)
https://find-model.jp/insta-lab/how-to-use-clubhouse/#Clubhouse-5

 SNS「Clubhouse」の招待枠。ネットオークションで買ってはいけないワケ(YAHOO!JAPANnews)
https://news.yahoo.co.jp/articles/61ff0e97b994ecfa38a62b872f80a27f53498be6?page=2

 VOGUE(Clubhouseは、FOMOを誘発する新しいソーシャルアプリです)
https://www.vogue.co.uk/arts-and-lifestyle/article/clubhouse-app

 「Clubhouse」の音声データが中国当局に漏れる可能性が浮上、開発元はセキュリティ強化を実施(TechCrunch Japan)
https://jp.techcrunch.com/2021/02/15/clubhouse-will-improve-security-to-china-spying-fears/

 

TEXT:セキュリティ通信 編集部
PHOTO:iStock

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