トピックス 2020.11.24 今さら聞けないDXとは?DXとデジタル化は似て非なるもの
「DX(デジタルトランスフォーメーション)」はネットニュースや新聞などさまざまなメディアで頻繁に取り上げられるようになり、今となっては注釈すら見られなくなるほどビジネスの世界で最頻出用語となりました。
DXと聞くとデジタル化をイメージする方も少なくありませんが、DXを単なる「デジタル化」だと捉えていると、その本質を見失ってしまいます。
そもそもDXという言葉は2004年にスウェーデンのエリック・ストルターマン教授によって提唱された概念で、一言で言い表せば、「デジタル技術を活用して売り上げや利益を伸ばす仕組み」を作ることなのです。
実は今、DXによってこれまでのビジネスの根幹が覆されようとしています。
日本が高度経済成長期以降に培ってきた組織形態、運営方法、意思決定方法などの「勝ちパターン」が無効化し、企業の資産と考えられてきたノウハウや人材さえもが、大きな「足かせ」となってしまう可能性が指摘されるようになってきました。
DXで成果を出すAirbnbは客室を一室も持つことなく世界最大の「ホテル企業」になった
DXで大きな成功を修めてきた企業を見ると、DXによるビジネス環境の変化をイメージしやすくなるかもしれません。
その一例に挙げられるのが宿泊施設や民泊を貸し出すサービスを展開している「Airbnb」です。
2020年2月の時点でAirbnbに登録されている物件数は600万件を超え、これはマリオット・インターナショナル、ヒルトン、そしてインターコンチネンタルなどホテルチェーン世界トップ5の客室数を足した数よりも大きいのです。
つまり、Airbnbは客室を一室も所有することなく世界最大のホテル企業に成り上がったことになります。
たった6300人という社員数で「人々に宿を提供する」という価値を従来のホテルと同じように提供しているのです。
こうして見てみると、既存のホテル企業にとって資産と考えられてきた土地や物件、そして人材までもが「足かせ」になりつつあることが分かります。
これまでとは全く違うビジネスモデルで最小限のコストしかかけないのにも関わらず、従来の企業と同じ価値を提供し、既存の企業に大打撃を与えるこのような企業を「ディスラプター」と呼びます。
こうしたディスラプターの存在は既存企業にとって大きな脅威であり、「DX」がニュースに頻繁に取り上げられる理由にもなっているのです。
経済産業省によれば、もしDXが進まなければ2025年以降に年間12兆円もの経済損失が生じる可能性があると指摘しています。
Airbnbなど、既存企業に大打撃を与えるDX企業の躍進を見ていると、年間12兆円の損失という言葉には現実味が伴うのではないでしょうか。
ネットフリックスから見えてくるDXの本質
では、DXの本質とは一体何なのか。
それは、デジタル化によってムダを見える化して削減、そこで浮いたコストを価値あるものに再投資することによって実現するのです。
つまり、デジタル化はあくまでも手段であって、「目的ではない」ということになります。
例えば、Airbnbと肩を並べるDX企業に「Netflix」が挙げられます。今でこそ動画配信サービス最大手として知られていますが、そんなNetflixは1997年の創業から2012年まではDVD配送レンタルサービスを行っていた会社でした。
しかし、コストがかかるDVD配送レンタルサービスを次第に見直し、DVDを配送するのではなくオンラインで配信する仕組み(デジタル化)を導入することでコストを大幅に削減しました。
そして削減に成功した巨額のコストを高クオリティ作品の制作費に再投資したことで数多くのオリジナル作品を制作し、既存のビデオレンタル店のみならず、これまでテレビや映画館が担っていた役割を奪い、現在の圧倒的な地位を確立していったのです。
終わりに
とは言え、DXで成果を上げている企業は、世界でも5%と極端に少ないのが現実です。
これは「DX」と「デジタル化」を混同し、経営モデル、人材、そして資金調達など企業の核となる根本的な問題に対処できていないことが理由に挙げられます。
これまで資産と信じられてきたものが「足かせ」になってしまうDX時代に、形だけのデジタル化では生き残ることは非常に困難だと言えるでしょう。
社内でデジタル化の動きが活発化した時、果たしてそれは「手段」なのか「目的」なのかを見極めるところから始めてみてはいかがでしょうか。
【関連リンク】
・経済産業省が推進するデジタルトランスフォーメーションDXとは何か?(ソフトバンク)https://www.softbank.jp/biz/future_stride/entry/column/20200226/
・産業界におけるデジタルトランスフォーメーションの推進(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/dx.html
TEXT:セキュリティ通信 編集部
PHOTO:iStock
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