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高齢者における車の運転は何歳まで大丈夫?免許の自主返納を考えるタイミングや注意点を解説

トピックス 2022.04.08 高齢者における車の運転は何歳まで大丈夫?免許の自主返納を考えるタイミングや注意点を解説

ここ数年、高齢者ドライバーによる交通事故のニュースをよく聞くようになりました。

私たち人間は、ある程度の年齢以上になれば身体能力が年々衰えていくのがふつうです。そのなかで、高齢者は具体的に何歳まで車の運転を続けても大丈夫なのでしょうか?

また、免許返納を考えるタイミングや、返納時に気を付けるポイントなどはあるのでしょうか?

この記事では、高齢者の運転と免許返納について詳しく解説します。

「そろそろ自分の運転が不安になってきた」「親が高齢者で運転しているのが心配」と感じている人はぜひ最後までご覧ください。

75歳以上のドライバーによる死亡事故の割合は?

75歳以上のドライバーによる死亡事故の割合は?

東京海上日動火災保険株式会社によると、75歳以上のドライバーによる死亡事故の割合は、75歳未満の人と比べて約3倍にものぼるとわかっています。

また、75歳以上のドライバーによる死亡事故を法令違反別に分析してみると、運転者が操作を誤った「運転操作不適」が最も多い結果となりました。

ほかにも、一時停止を怠った「一時不停止」や優先車両の通行を妨害した「優先通行妨害」、通行が許可されていない部分を走行する「通行区分」などの理由によっても死亡事故が起きています。

人間は20歳を過ぎた頃から、少しずつ身体能力が衰えていく生き物です。もちろん高齢になってもハキハキと話して、なに不自由なく生活している人もいます。

高齢者の運転は危険だとわかってはいるものの、「車は生活の必需品」だと考える人が多い

しかし、車の運転は多数の情報を瞬時に判断しなければなりません。「停車中の車の影から人が飛び出してこないか」「曲がり角から車が来ないか」など一瞬一瞬で適切な判断を下し、さらには正しい操作をする必要があるのです。

そのため、判断力が衰えてしまった高齢者が車を運転するのは難しいといえますが、そうはわかっていても運転を止められない高齢者が多いのには理由があります。

たとえば、住んでいる地域の交通の便が悪く、買い物や病院に歩いて行けない状況だとしたら、なかなか車を手放せません。また、定年がない個人事業主として働く高齢者は、毎日仕事で車を使っているケースも多いでしょう。

このように、高齢者の運転は危険だとわかってはいるものの、「車は生活の必需品」だと考える人が多いのです。

そもそも高齢者は何歳まで運転できる?

そもそも高齢者は何歳まで運転できる?

そもそも車の運転に年齢制限はあるのでしょうか?

日本の法律において免許を取得できるのは「18歳」からと決められていますが、「〇歳以上は運転してはいけない」といった年齢の上限は定められていません。

極端なことをいえば、身体能力が衰えておらず問題なく車の操作ができるのであれば、90歳や100歳でも運転は可能です。

ただし、これはあくまでも仮定の話です。高齢者になっても体や脳の働きが鈍らず、20代や30代のように若々しい健康体だという人はいないでしょう。衰えるスピードや程度には個人差がありますが、すべての人が高齢になるにつれて体や脳の働きが鈍くなっていきます。

四つ葉マーク

そのため、日本では70歳以上のドライバーを「高齢運転者」と呼び、高齢者マークである「もみじマーク」や「四つ葉マーク」をつけて走行することを義務づけています。

また、70歳からの運転免許更新時には、高齢者講習を受講しなければなりません。さらに75歳以上の場合には、高齢者講習のほかに認知機能検査を実施します。

認知機能検査は簡単にいうと「認知症ではないか」をチェックする検査です。検査を受けて問題ないと判断されれば2時間ほどの講習で終了、「判断力が少し低くなっている」とされれば3時間の講習を受けます。

万が一「判断力がない」として医師などから認知症の診断を受けた場合には、運転免許の取り消しや停止処分が下されます。

運転免許の自主返納を考えるタイミングは「70歳前後」

運転免許の自主返納を考えるタイミングは「70歳前後」

運転免許の自主返納を考えるべきタイミングは「70歳前後」がよいでしょう。道路交通法においても70歳以上は「高齢運転者」とされているため、そのタイミングで返納するかどうかを一度考えてみるのをおすすめします。

また警察庁によれば、平成25年に運転免許を自主返納した75歳以上の高齢者は87,014人でしたが、令和2年では297,452人と年々増加傾向にあります。

この数字からもわかるとおり、高齢者の事故が増加している昨今、自らの運転に不安を感じる高齢者が多くなってきているといえるでしょう。もちろん体に衰えを感じたら、70歳未満であっても自主返納は考えるべきです。

高齢者のなかには、運転免許証を身分証明書の代わりに使用している人も多いでしょう。そこで、免許を自主返納すると身分証がなくなってしまうと心配し、返納を拒むケースが見受けられます。

身分証の代わりになる「運転経歴証明書」

身分証の代わりになるものとしてはマイナンバーカードやパスポートが挙げられますが、マイナンバーカードの発行には手間がかかって面倒に感じたり、パスポートは持ち歩くのにかさばって煩わしかったりする人も少なくありません。

このような人のために、身分証の代わりになる「運転経歴証明書」の発行が2002年より導入されました。

運転免許証を身分証の代わりにしている人で自主返納をする場合には、ぜひ運転経歴証明書を発行してもらいましょう。

高齢者が運転免許を自主返納すると受けられる特典

高齢者が運転免許を自主返納すると受けられる特典

国全体で高齢運転者の免許自主返納を推進するために、各地域でさまざまな特典を設けています。

たとえば、車がなくなって買い物や病院に行けなくなってしまう人のために、バスや電車、タクシーといった公共交通機関の割引券・優待券などを配布している地域があります。

また、重たいものを購入したときなどに使える配送料無料や割引サービスを実施しているスーパーやデパートなども少なくありません。

ほかにも、免許を返納して要らなくなった車を売却する際に、通常よりも高めに査定したり、ギフト券の配布や現金還元をしたりしている企業もあります。

特典が受けられるのは「免許を返納した65歳以上の人」

こうしたさまざまな特典はお住まいの地域によって内容が異なるため、各市区町村の公式サイトでチェックするか、電話などで問い合わせてみてください。

ただし、特典が受けられるのは「免許を返納した65歳以上の人」です。65歳未満の人は免許を返納しても対象ではありませんので注意しましょう。

運転免許を返納するときに気をつけるべきポイント

運転免許を返納するときに注意すべきポイント

最後に、運転免許を返納するときに注意すべきポイントを3つご紹介します。

まずは「返納する日に車を運転して行かない」ように気をつけましょう。これは意外にも盲点になってしまうポイントですが、運転免許を返納しに行くわけですから帰り道には当然免許を持っていません。

免許返納は「警察署」や「運転免許センター」などで行っています。ご自宅から遠い場合も多いため、いつもの癖で車を運転していくと帰り方に困ってしまいます。

免許返納の当日は家族や友人に送ってもらうか、バスやタクシーといった公共交通機関を利用して向かいましょう。

2つ目の注意すべきポイントは「返納前に車の名義変更をしておくこと」です。

名義変更をする場合にはさまざまな書類が必要になりますが、書類を揃えるのに警察署や運輸支局などに行かなければなりません。そのため、先に免許を返納してしまうと、警察署や運輸支局などに車で行けなくなってしまいます。

「運転経歴証明書を同時に発行するときは手数料代と顔写真を用意する」

車の名義変更自体は免許を返納してからでも可能ですが、できるだけ免許を返納する前に済ませておくと安心です(名義変更が必要ない場合はとくに問題ありません)。

そして、最後の注意点は「運転経歴証明書を同時に発行するときは手数料代と顔写真を用意する」ことです。

先にもご紹介した、身分証の代わりになる運転経歴証明書を発行してもらいたいと考えている場合には、1,100円の手数料代と証明写真を用意しなければなりません。

また、免許の返納手続きは約20?30分で完了しますが、運転経歴証明書も発行してもらう場合には約1?2時間かかります。時間に余裕がある日を選んで返納手続きを行うとよいでしょう。

終わりに

時間をかけて話し合い、本人が納得できる形で自主返納を促していくのがよい

日本において、車の運転に年齢制限の上限はありません。そのため、自分が高齢者になっても、なにかのキッカケがなければ自ら運転免許を返納しようと思わない人も多いのです。

しかし、交通事故が起きてからでは手遅れです。ケガで済めば不幸中の幸いですが、自分や他人の命を奪ってしまってからでは後悔してもしきれません。

もしあなたが高齢ドライバーだとしたら、本記事が自分の年齢と向き合い、免許の自主返納を考えるキッカケになれば幸いです。

また、ご家族の方が読まれている場合には、身内の高齢者が事故を起こさないように自主返納を提案してみるのも一つです。ただし、免許の自主返納は、頭ごなしに伝えても本人の意思がなければできません。

時間をかけて話し合い、本人が納得できる形で自主返納を促していくのがよいでしょう。

【関連リンク】

・免許返納するとどんなメリットがある?年齢は?手続きの仕方は?(WHILL)
https://whill.inc/jp/column/08_drivers-license#_Toc69139553

・車の運転は何歳までできるの?高齢ドライバーが知っておきたい3つのこと(グーネットマガジン)
https://www.goo-net.com/magazine/knowhow/carlife/45401/

・高齢ドライバーの安全運転について~75歳以上のドライバーのご家族や周囲の方へ~(東京海上日動)
https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/world/guide/drive/201609.html

・運転免許の申請取消(自主返納)件数と運転経歴証明書交付件数の推移(警察庁Webサイト)
https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/pdf/rdhtransition.pdf

・運転免許証の自主返納と同時に運転経歴証明書の交付申請をする方(警察庁Webサイト)
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/menkyo/koshin/jisyu_hennou/henno_kofu.html

・自動車の名義変更とは?手続きの流れや必要な書類について(教えて!おとなの自動車保険)
https://www.ins-saison.co.jp/otona/oshiete/car/car-namechange.html

・体力低下は年齢のせい?健康的に生活するために取り入れたい改善方法(サントリーウェルネスOnline)
https://www.suntory-kenko.com/column/article/10/

・道路交通法(e-Gov法令検索)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000105

TEXT:セキュリティ通信 編集部
PHOTO:iStock

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