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処置の遅れが命取りに!熱中症のリスクとコロナ禍における危機管理と対策

トピックス 2021.08.27 処置の遅れが命取りに!熱中症のリスクとコロナ禍における危機管理と対策

日本の夏は、気温も湿度も高く、蒸し暑いことが特徴。今年も最高気温35度以上の猛暑日が約1カ月にわたって観測され、7月末までの熱中症による搬送者は、約2万6800人で前年同時期の1.7倍となっています。(総務省消防庁熱中症による救急搬送者数の推移より)

猛暑のなか開催された東京オリンピックでは、開会式からわずか1週間で30人の大会関係者が熱中症による治療を受け、最終日のマラソンでは、日本代表選手がレース終了後「深体温部が40度に上昇する重度の熱中症」と診断されました。

去年に引き続き、新型コロナウイルスが猛威をふるう状況下で、両患者の増加に歯止めがかからない場合、搬送先を確保することが困難になり、適切な医療が受けられないリスクが生じる可能性もあります。

新型コロナウイルス感染症と熱中症対策を両立し、この夏を乗り切るための危機管理と対策をまとめました。

知っておきたい熱中症のメカニズム

知っておきたい熱中症のメカニズム

「熱中症」は暑い環境で生じる健康障害の総称。体内の水分や塩分バランスが崩れ、体温を調節する機能が働かなくなり、体温の上昇やめまい、けいれん、頭痛などのさまざまな症状を引き起こします。熱中症は「環境」と「身体」の2つの要因によって引き起こされます。

環境による要因

環境による要因

熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された「暑さ指数(WBGT)」は、
①湿度
②日射・輻射など周辺の熱環境
③気温
の3つを取り入れた指標です。


この暑さ指数が31度以上の「危険」及び28~31度の「厳重警戒」では、室外内共に全ての活動で熱中症の危険が非常に高くなります。このレベルでは、屋外の活動だけでなく、家の中でじっとしていても室温や湿度の高さから熱中症にかかる可能性があります。

コロナ禍で屋外に出ることは少なくても油断は禁物。救急要請時の発生場所では、住宅等居住施設が全体の37%を占めており、体育館や気密性の高いビルやマンションの最上階、浴室やトイレ、寝室など、家庭内の風通しの悪い室内では「室内型熱中症」が起こりやすいので注意が必要です。

身体的な要因

身体的な要因

運動や作業をすると、人間の身体では熱が生まれます。通常では、人間の身体には体温調節機能が備わっているため、体温が上がり過ぎたときには、自律神経の働きによって末梢の血管が拡張し、皮膚に多くの血液が流れ込むことで、熱をからだの外に放出します。

ところが、あまりにも暑い環境に長くいると、体温調節機能が乱れ体外への熱の放出ができなくなり、体内に熱がこもって体温が上昇。さらに、急激に大量の汗をかくと、体内の水分と塩分が失われ、体液のバランスが崩れ、筋肉や血流、神経など、からだのさまざまな部分に影響を及ぼし、痙攣や目眩、失神、頭痛、吐き気といった熱中症の症状があらわれます。

熱中症にかかりやすいタイプ

熱中症にかかりやすいタイプ

高齢者や乳幼児、基礎疾患がある人は比較的熱中症にかかりやすいようです。特に高齢者や乳幼児は、体温調節機能の衰えや発達が未熟であるため体内に熱がこもりやすいのでリスクが高いでしょう。子どもは大人よりも身長が低く地面に近い分、アスファルトの照り返しなどによる熱の影響を受けやすくなることも要因のひとつ。

心臓病、糖尿病、高血圧、腎臓病、精神神経疾患、皮膚疾患などの持病も、体温調節機能の乱れの原因となることがあり、ハイリスク要因に。病気の治療のために薬を服用している場合も、薬の種類によって発汗の抑制や利尿作用があるものがあり、熱中症の原因になることがあります。

セルフチェックを心がけて!熱中症の段階とリスク

セルフチェックを心がけて!熱中症の段階とリスク

熱中症は軽傷から重症まで3つの段階に分かれます。

軽症

軽症は、現場での応急処置で対応できるレベル。熱中症の代表的な初期症状として、めまいや立ちくらみ、一時的な失神があります。軽症の段階で気が付いて、すぐに休めば回復するのですが、もともと体調が悪く頭痛や倦怠感を感じている場合には、症状が悪化するまで放置してしまう可能性があります。

中等症

中等症は、病院への搬送を必要とするレベルで、頭痛や吐き気、嘔吐、倦怠感、虚脱感などがあります。体がぐったりする、力が入らないなどがあり、ごく軽い意識障害が起こります。

重症

重症は速やかに入院し、集中治療の必要があるレベルで、意識障害、けいれん、手足の運動障害、呼びかけへの反応がおかしい、全身の痙攣、まっすぐ走れない・歩けないなど熱射病の症状がみられます。

特に、脳、肝、心、肺の細胞は熱に弱く、多臓器不全、尿が出なくなったり、筋肉が大量に壊れるため腎臓が老廃物を処理しきれなくなり、急性腎不全になる可能性や最悪の場合は死に至るケースもあります。

熱中症による症状

熱中症による症状

熱失神

炎天下にじっとしていたり、屋内でも突然立ち上がった時に起こります。皮膚血管の拡張と下肢への血液貯留のために血圧が低下し、脳血流が減少して起こるもので、めまいや失神などがみられます。

熱痙攣

大量の発汗があり、水を補給した場合に血液の塩分濃度が低下することが原因。筋の興奮性が亢進して、四肢や腹筋の痙攣と筋肉痛が起こります。水を飲むことで症状が悪化してしまうので病状の見極めが重要です。

熱疲労

脱水によるもので、全身倦怠感、脱力感、めまい、吐き気、嘔吐、頭痛などの症状が起こります。大量に汗をかき、水分の補給が追いつかないと、身体が脱水状態になり熱疲労の症状がみられます。

熱射病

熱中症の中で最も重い症状で、体温調節が出来なくなって起こります。高体温と意識障害が特徴。意識障害は、周囲の状況が分からなくなる状態から昏睡まで、程度はさまざまですが、脱水が原因になっていることが多く、血液凝固障害、脳、肝、腎、心肺など全身の体温が上昇することで中枢機能に異常をきたした状態。応答が鈍い、言動がおかしい、意識がないなどの意識障害やショック状態になる場合もあります。

熱中症が疑われた場合の応急処置

熱中症が疑われた場合の応急処置

最悪の場合、亡くなる危険性をはらむ熱中症。万が一、自分自身や周囲の人が熱中症と疑われた場合にすべき行動についてまとめました。

1.症状の確認

熱中症が疑われる時には、適切に応急処置をする必要がありますが「意識がない、もしくは意識がはっきりしていない」場合はすぐに救急車を要請し、現場での応急処置も並行して行いましょう。

2.涼しい場所へ移動させる

症状が確認できたら、風通しのよい日陰や、できればクーラーが効いている室内などの涼しい場所へ移動させましょう。

3.身体を冷却する

衣服を脱がせたり、きついベルトやネクタイ、下着はゆるめて身体から熱を放散させます。露出させた皮膚に冷水をかけて、うちわや扇風機などで扇ぐことにより体を冷やします。氷のうなどがあれば、それを首の両脇、脇の下、大腿の付け根の前面に当てて、皮膚のすぐ近くにある太い血管を冷やしましょう。

4,水分・電解質の補給

意識がはっきりしているなら、水でも構いませんが可能であれば電解質を適量含んだ冷えた飲物を自分で飲ませます。汗で失われた電解質を適切に補えるスポーツドリンク(ナトリウムを100mlあたり40~80mg含んでいる飲料)や経口補水液などが最適。

「呼び掛けや刺激に対する反応がおかしい」など意識障害がある場合、誤って水分が気道に流れ込む可能性があるため、無理に飲ませることは避けましょう。「吐き気を訴える」または「吐く」という症状がある時は、口から水分を摂らせることは適切ではないため、医療機関での点滴等の処置が必要となります。

予防が肝心! 熱中症リスクを回避する方法

予防が肝心! 熱中症リスクを回避する方法

熱中症は、症状が重くなると亡くなるケースもある恐ろしい病気である一方、適切な行動を心がければ予防することができます。熱中症にかからないための方法をまとめました。

エアコンを活用する

エアコンの活用は非常に有効な熱中症予防のひとつ。室内の人数や行動、服装などに合わせて適切な温度設定を心がけましょう。エアコン使用時は、冷風が直接人に当たらないように注意し、冷気は部屋の下のほうにたまりやすいので、扇風機などを利用して風を動かすと効果的。

ただし、室内の気温をあまり下げてしまうと、涼しい部屋から暑い屋外などに出たときに、急激な気温差にからだが適応できず、めまいや気分の悪さなどを引き起こすことがあります。身体に負担をかけないためにも、設定温度を24度以下にしないよう注意しましょう。

家庭内の「風通しの悪い場所」をチェックする

家の中でも風通しの悪い場所は熱気がこもりやすく、熱中症の原因になることがあります。締め切った寝室、浴室、トイレ、火を使って調理するキッチンなどは、時々ドアをあける、扇風機や換気扇を回すなど、意識して換気を心がけましょう。

こまめに水分と塩分補給をする

暑くて大量に汗をかくと体内の水分と塩分が失われ、血液の流れが悪くなり、脳や身体のすみずみにまで酸素や栄養が届かなくなり、筋肉のけいれんや頭痛、吐き気、めまいが起こったり、高熱がでることも。予防には、水分補給が不可欠ですが、水分のみでは塩分が不足して血液が薄い状態になってしまうため、塩分も一緒にとることが必要です。

のどが渇かなくても飲む

脱水症状のサインとして、のどの渇き、汗や尿の量が減る、尿の色が濃くなるなどの症状がありますが、軽い脱水状態ではのどが渇かないこともあります。特に、高齢者は脱水症状が進んでいても、のどの渇きを感じにくい傾向があります。

のどの乾きをそれほど感じなくても、外出や運動、入浴、睡眠前の適切な水分補給を心がけましょう。飲物は、水、麦茶、塩水やスポーツ飲料など。カフェインを含むお茶やコーヒー、アルコールを含む酒類には利尿作用があり、かえって脱水症状を進めてしまう危険があるので、飲み過ぎには注意が必要です。

吸湿性、通気性のよい素材の衣類を選ぶ

猛暑のなかで少しでも快適に過ごすためには、汗を吸い、通気性のよい綿素材の衣類が最適。吸汗素材、速乾素材のシャツや、軽く涼しいタイプのスーツなどもおすすめ。

首回りがしめつけられると熱がこもってしまうため、可能であればネクタイなどを外し、襟元をゆるめて風を通しましょう。

暑さに負けない身体をつくる

熱中症は、身体が暑さに慣れていないことで起こりやすくなります。身体が暑さに慣れることを「暑熱順化」といいます。日常的に運動をしていて適度に汗をかく習慣がある人は既に「暑熱順化」しているので、熱中症にかかりにくくなります。

1日30分程度のウォーキングを続けるなど、日頃から暑さに対抗できるからだづくりをしておくといいでしょう。また、寝不足や二日酔い、風邪気味、食事抜きなど、体調が悪いときも熱中症になりやすいので、十分な栄養と休養をとり、健康管理を心がけましょう。

コロナ対策との両立

コロナ禍では、猛暑であっても、感染症予防のためマスク着用が当たり前になっています。

しかし、マスク着用が熱中症のリスクになることもあります。人間は、発汗や皮膚の血流を上げること、血管を拡張することで熱を体内から放出するシステムを持っていますが「呼吸」もそのひとつ。マスクをしていると、通常よりも呼吸が妨げられてしまうので、体の熱を放出しにくくなってしまいます。例えば、マスクを着用して1時間、5kmのジョギングを行った場合、マスク着用時の運動では心拍数、呼吸数、二酸化炭素が増加し、マスクをつけた部分の皮膚温度は1.76℃上昇したという研究結果もあります。

また、マスクをしていると口の渇きを感じにくくなり、水分補給が不十分になり、無意識のうちに脱水が進む危険性もあります。暑い時には人ごみを避け、適宜マスクを外すようにしましょう。

終わりに

新型コロナウイルスと熱中症対策を並行して行う

熱中症対策の重要性については、行政やマスコミによる注意喚起が浸透しつつありますが、依然として毎年多くの人が熱中症で医療機関に搬送される状況が続いています。

「熱中症ではないだろう」と軽く考えたり「自分は大丈夫」と過信している人が多いのが現状。「体調がいつもと違う」と思ったときにはすでに身体の自由が利かず、自力で対処ができない状態まで悪化しているケースもあるようです。

軽症であれば、涼しい場所に移動して衣類を緩め、電解質など水分を摂り、身体を休めることで回復しますが、熱射病など重症になった場合には、意識障害や肝機能障害を引き起こす可能性もあるので油断はできません。

熱中症対策のポイントは、どんなに些細なことでも「いつもとは違う、おかしい」といった前ぶれとなる体調の変化に気付き、水分や塩分を適切に摂り、暑さを避けて休息をとること。

屋内にいたとしても、クーラーや扇風機を活用し、適切な温度設定と水分補給を定期的に行うことが重要。また、マスク着用による脱水や呼吸困難などのリスクも十分に考慮し、適時マスクを外すなど新型コロナウイルスと熱中症対策を並行して行うことをおすすめします。

【参考サイト】

厚生労働省「新しい生活様式」における熱中症予防行動のポイントをまとめました
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_coronanettyuu.html

環境省 熱中症予防情報サイト
https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness.php

公益社団法人全日本病院協会みんなの医療ガイド
https://www.ajha.or.jp/guide/23.html

コロナと判別難しい熱中症、前年比1.7倍に 病床逼迫の恐れも
https://mainichi.jp/articles/20210805/k00/00m/040/207000c

熱中症が疑われる時の応急処置
https://www.otsuka.co.jp/health-and-illness/heat-disorders/first-aid/

TEXT:セキュリティ通信 編集部
PHOTO:iStock

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