トピックス 2021.07.23 日本で最も多い犯罪・自転車盗。7つの自衛手段と盗難被害に遭った場合の対処法
2015年の国連サミットで「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されて以降、SDGs(持続可能な開発目標)というキーワードをよく耳にするようになりました。SDGsの流れの中で、より健康的で環境に優しい移動手段として、自転車を活用する人が増えています。
ただし、自転車は盗難のリスクと常に隣り合わせでもあります。警視庁によると、令和元年度の自転車盗難の認知件数は全国で168,703件。単純計算すると、1日あたりなんと462台もの自転車が盗難被害に遭っているという試算になります。その中には、ロードバイクなど何十万円もする自転車も含まれています。
本記事では、「自転車」という視点を通じて、大切な所持品を守るための自衛手段について考えていきたいと思います。記事の後半では、万が一盗難被害に遭ってしまった場合の対処法についても触れます。
自転車盗難というと、繁華街や路地裏の駐輪場などで発生するイメージがあるかもしれませんが、自転車盗難のリスクが最も高い場所は自宅です。
警視庁発行の「自転車盗の防犯対策」という資料によると、東京都内における自転車盗のおよそ4割が「住宅」で発生しており、「駐車場や駐輪場」「道路上」がそれに続きます。
つまり、店先や駐輪場といった外出先での対策はもちろんのこと、自宅に自転車を保管する際にも油断は禁物であるということです。
では具体的に、どのようなセキュリティ対策をすべきなのでしょうか?
あなたはいくつできていますか?自転車盗難を防ぐための7つの自衛手段
セキュリティ対策の基本となる7つの自衛手段を挙げてみます。すでに自転車をお持ちの方は、いくつ実践できているかをセルフチェックしてみてください。
1. 防犯登録済みの自転車に乗る
2. 自転車から離れる時は、必ず施錠する
3. 犯罪防止効果が高い場所に駐輪する
4. 主錠の他に補助錠をつける
5. 自宅の駐輪場に監視カメラや人感センサーを設置する
6. GPSトラッカーで追跡する
7. 自転車パーツに名前や印を書く
1.防犯登録済みの自転車に乗る
平成6年以降、自転車を所有している人は自転車の車体番号と防犯登録番号を都道府県に登録することが法律で義務付けられており、防犯登録標識付きの自転車に乗ることはセキュリティ対策の大前提となります。
防犯登録を行うことで自転車の所有者が明確になり、盗難や盗難品の転売のほか、放置自転車を防ぐことにも繋がります。
実店舗で販売されている自転車は通常、防犯登録がされていますが、通販などでは防犯登録がされていないこともあります。その場合には、お近くの自転車専門店やホームセンターなどで防犯登録を受け付けてもらえます。
防犯登録時に交付される「防犯登録カード」は無くさないよう自宅で保管し、防犯登録番号が記載されている「防犯シール」は車体の目立つ場所に貼っておきましょう。
国民一人当たりの自転車保有率が世界一の「自転車大国」オランダでは、車体の金属部分に車体番号などのIDを直接刻印している人が多いようです。シールやプレートなどは盗難時に剥がされてしまう危険性があるためです。
2.自転車から離れる時は、必ず施錠する
基本的なことではありますが、ほんの一瞬でも自転車から離れる時には、必ず施錠するようにします。スーパーやコンビニなどに立ち寄った際はもちろん、自宅の駐輪場であったとしても、施錠を怠らないようにしましょう。
3.犯罪防止効果が高い場所に駐輪する
外出先で駐輪する際には、犯罪防止効果が高い場所に駐輪するようにしましょう。具体的には、
①通行人などの人目につきやすい
②柱など車体をつなぐ固定物がある
③固定物と車体を繋ぐロックがある
④明るさと見通しが確保されている
⑤防犯カメラが設置されている
といった特徴の場所を選ぶと良いでしょう。
ただし、自転車を路上に駐める場合には、駐輪禁止区域に指定されていないかどうかを確認してください。駐輪禁止区域であった場合には違法駐輪とみなされ、自転車を撤去される可能性があります。
4.主錠の他に補助錠をつける
自転車に据付されている鍵(主錠)と補助錠を組み合わせることで、盗難抑止効果が期待できます。
補助錠は地面から出来るだけ遠い位置に付け、自転車と固形物と繋ぐように取り付けましょう。補助錠が地面と近い位置にあると、窃盗犯はワイヤーカッターを足で踏むことで補助錠を破壊できてしまうためです。
補助錠にはワイヤー錠やチェーンロック、U字ロックなど様々な種類がありますが、耐久性に関してはU字ロックが高い効果を発揮すると言われています。
5.自宅の駐輪場に監視カメラや人感センサーを設置する
先述の通り、自転車盗難が多発している場所は自宅です。自転車を駐輪場に止める場合には、監視カメラや人感センサーなどを設置しましょう。集合住宅などで、監視カメラや人感センサーなどの設置が難しい場合には、面倒であっても、目の届く室内で自転車を保管するのが確実です。
6. GPSトラッカーで追跡する
GPSで位置情報を取得できる小型端末(GPSトラッカー)を自転車に装着しておくことで、リアルタイムで自転車の位置情報を取得することも可能です。最近では、自転車専用に開発されたコンパクトなGPSトラッカーも販売されています。
7.自転車パーツに名前や印を書く
自転車本体だけでなく、サドルやタイヤなどのパーツが転売目的で盗難されるケースも相次いでいます。
パーツの盗難被害を防ぐには、サドル専用の盗難防止ボルトを装着するといった対策のほか、パーツ自体に名前を書いたり目印をつけたりすることで転売されにくくなるため、犯罪抑止策として有効です。
大切な自転車が盗難被害に遭ってしまった!何をすべきか?
盗難を未然に防ぐための対策を適切に実施していたとしても、盗難被害に遭ってしまう可能性を完全に無くすことはできません。ここからは、万が一盗難被害に遭ってしまった場合に備え、具体的にどのような行動を取るべきかを確認しておきましょう。
自転車など、所持品の盗難被害に遭った場合にまずすべきことは、最寄りの警察署に出向き、盗難被害があった事実を届け出ることです。すぐに警察署に出向くことができない状況の場合、まずは盗難現場から110番に電話をかけるという方法でも問題ありません。
警察署では、「盗難届」の提出が求められます。盗難届とは、窃盗など事件性が疑われる場合に提出する書類であり、自己の不注意による落とし物など、事件性がない場合には「遺失届」という書類を提出することになります。
なお、自転車の盗難届の提出時には、身分証明書や印鑑といった基本的書類のほかに、自転車の防犯登録カード(防犯登録番号)が必要となります。
盗難届が無事に受理されると、盗難品の全国データベースに情報が登録されるとともに「盗難届出証明書」が発行されます。盗難届出証明書は、自転車保険などを申請する際に必要となる証明書類ですので無くさないようにしましょう。
盗難届の提出後、お探しの物品が発見された場合には、盗難届に記載した電話番号に警察から電話がかかってきます。
盗難届が受理された後に路上などで盗難品を発見した場合には、そのまま持ち帰らずに、必ず最寄りの警察署に出向き、盗難届の取り下げをしましょう。
盗難届の取り下げをしない限り、警察のデータベース上では盗難品扱いになっているため、該当自転車に乗っている際に職務質問を受けたり、事実確認を求められたりする可能性があります。
終わりに
本記事では、自転車の盗難被害を未然に防ぐための自衛手段や、盗難被害に遭ってしまった場合の対処法について具体的に解説しました。
自転車を例に解説してきましたが、盗難届の提出方法などは、スマホやパソコン、自動車などの所持品全般にも共通する内容なので、汎用性の高いセキュリティ知識として覚えておくと良いでしょう。
すでに自転車をお持ちの方はもちろんのこと、自転車購入を検討されている方も、本記事で紹介したセキュリティ知識を参考に、安心・安全・快適な自転車ライフを楽しんでください。
【関連リンク】
令和元年の刑法犯に関する統計資料(警視庁)
https://www.npa.go.jp/toukei/seianki/R01/r01keihouhantoukeisiryou.pdf
「自転車盗」の防犯対策(警視庁)
https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kurashi/higai/guard/bicycle_bohan.html
「あっ忘れた」とならないように。自転車の防犯登録時に必要なものと注意点(TABIRIN)
https://tabi-rin.com/archives/article/42300
自転車の盗難防止策 愛車を盗まれないようにするためのヒントを紹介(通勤サイクリングラボ)
https://bike.shimano.com/ja-jp/mindswitch/lab/91/#i-5
自転車の鍵を取り付けて防犯対策!選び方とおすすめ商品について!(生活110番)
https://www.seikatsu110.jp/key/ky_police/125667/
盗難届を出してから盗難物が見つかるまでの流れ(HOME ALSOK)
https://www.alsok.co.jp/person/recommend/1045/
How not to get your bike stolen in the Netherlands(I AM EXPAT)
https://www.iamexpat.nl/expat-info/dutch-expat-news/how-not-get-your-bike-stolen-netherlands
TEXT:セキュリティ通信 編集部
PHOTO:iStock
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