トピックス 2021.01.12 徹底ファクトチェック!2020年のアメリカ大統領選挙にSNSはどう利用されたのか(再掲)
本記事の内容について「ミネソタ州、ミシガン州デトロイト、ウィスコンシン州の投票率はいずれも100%未満だった」とするBBCの記事を元に、本記事内では「投票率が100%を超えている州はないことが確認されている」とした誤った記載を行っていました。
また、記事の制作時から掲載を行うまでの間に、投票における不正を報告するアメリカ政府の報告書が発表されておりますので、上記を踏まえて記事の内容を修正させて頂きました。
ご迷惑をお掛けした読者の皆様、ならびに関係各位に深くお詫び申し上げます。
新型コロナウイルスの流行による通常とは異なる状況下で多くの争点がありましたが、今回の大統領選で特に混乱を呼んだのは飛び交う情報が多くそれが事実なのかどうかよく分からないという点でした。
今回の記事の中では、SNSを中心に2020年のアメリカ大統領選挙で飛び交った情報の真偽を確認するとともに、今一度SNSへの向き合い方を確認してみましょう。
大統領選で飛び交った情報とその真偽について
それでは、どのような情報がSNS上を飛び交ったのか、その一部をピックアップしていきたいと思います。
検証①:不正投票や集計ミス
トランプ大統領は11月23日、「一部の激戦州では有権者の数よりも多くの投票数があった」とツイッターにて発言しました。これはトランプ大統領以外にも多くのユーザーによって複数の州で投票率が100%を超えたと指摘する情報が投稿されています。
In certain swing states, there were more votes than people who voted, and in big numbers. Does that not really matter? Stopping Poll Watchers, voting for unsuspecting people, fake ballots and so much more. Such egregious conduct. We will win!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) November 23, 2020
この情報については投票率が100%を超えているとの情報があったミネソタ州、ミシガン州デトロイト、ウィスコンシン州において、いずれの地域の投票率も100%を上回るものではなかったことをBBCが発表しています。
一方で、トランプ政権のピーター・ナヴァロ大統領補佐官は12月17日、今回の大統領選挙での大規模な不正について、アリゾナ州、ジョージア州、ミシガン州、ネバダ州、ペンシルベニア州、ウィスコンシン州において組織的な不正工作があったとする具体的な証拠や証言をとりまとめた報告書を提出しました。
しかし、この件については連邦議会によって1月7日に大統領選挙でのジョー・バイデン氏の勝利が認定されており、1月20日の大統領就任式において現政権から新政権への移行が行われる予定となっています。
検証②:バイデン氏と息子を巡る疑惑
バイデン氏の息子であるハンター・バイデン氏を巡り、バイデン氏が副大統領在職中に不正に圧力をかけたとされるウクライナ企業の役員をハンター氏が勤め、不正に報酬を得たという指摘があります。
こちらは、ハンター・バイデン氏がウクライナの企業に在籍し、報酬を受け取っていたことは事実であるというアメリカ上院議会の報告書が存在しています。しかし、そこで不正な報酬を得ていたかについては断定されていません。
また、同議会に11月18日に提出された補足資料では、ハンター・バイデン氏が中国共産党の関係者と不正な取引を行って巨額の報酬を得たことについて、証拠となるメールの記録や証言が存在することが報告され、刑事事件としての捜査要求が行われています。
検証③:SNSによる検閲
投票期間中から投票終了後にトランプ大統領が行ったツイッターとフェイスブックの投稿に対して、ツイッターやフェイスブックの運営から真偽が確かでないとする警告メッセージが表示されました。トランプ大統領の陣営は、この件について選挙における公平性に反するという訴えを行っています。
警告メッセージを表示させることについては、企業側に自己裁量による投稿の削除の権利があるため法律に反しているということはないようです。
一方で、ツイッター上では先ほどご紹介したハンター・バイデン氏の疑惑に関する報道記事やバイデン陣営のスキャンダルを扱う投稿を一時的に拡散できないようにするなど、バイデン陣営を支持するための偏向した検閲が行われたとして議論を呼んでいます。
検証④:不正の証拠となるサーバーをドイツで押収
こちらは、2020年11月中旬頃にツイッター上で「選挙不正の証拠が保存されたスペイン企業のサーバーが、ドイツ・フランクフルトで米軍に押収された」という情報が拡散されました。
疑惑の対象となったサイトル社は、得票結果のオンライン表示など選挙の関連業務の支援を行う企業で、同社はフランクフルトで利用しているサーバーは存在しないことを発表している他、アメリカ陸軍の報道官もこの件については虚偽であると明言していることがAP通信の報道で明らかになっています。
SNSが普及した時代のITリテラシーのありかた
SNSの普及により、情報の拡散速度は飛躍的に高まりました。また、多くの人々が情報を受け取るだけでなく、発信側の立場にもなることが従来の情報の扱いと異なる点です。
こうした状況では、情報の真偽に関わらず一瞬にして情報が広がっていくため、私たちは情報の真偽を確認する必要が生まれていて、確認を怠ってしまうと自分がデマや誤情報の拡散者になってしまうリスクも存在します。
情報の拡散スピードが上がるに連れて、自ら情報の確認をしなくてはならない責任も上がっていると言えるのではないでしょうか。
終わりに
今回の大統領選挙にまつわる混乱は、アメリカという国の特性や国民性によるところが大きいとも言われています。
それでも、日本でも選挙や災害の際などには、同じような混乱が起きてしまうこともあり得るため私たちも十分に注意する必要があるでしょう。
SNSの利用は便利さや面白さがある一方で、ITリテラシーをもって情報の真偽を確かめ、自分の言動について注意しなければいけないのはSNSを手に入れた代償なのかもしれません。
【関連リンク】
・BBC NEWS|【米大統領選2020】 検証・投票について色々なうわさ 投票の数や投票機など
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-55054609
・ハンター疑惑の追及本格化でバイデン政権は炎上か(JBpress)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/63008
・毎日新聞|米大統領選「不正の証拠サーバー押収」は誤り 企業・米陸軍も否定
https://mainichi.jp/articles/20201116/k00/00m/030/291000c
・「選挙不正」徹底調査したナヴァロ報告書の説得力(Yahoo! Japanニュース)https://news.yahoo.co.jp/articles/a708b9fae82676d27f3e19312a96c3e5cfdd2aa0
TEXT:セキュリティ通信 編集部
PHOTO:iStock