Sony
Sony
QRコードのイメージ

トピックス 2021.01.08 PayPayなどが数百億円規模の予算をキャンペーンに投じるワケ「時代はITから“DT”へ」

現在の日本は世界の先進国の中でも飛び抜けて多くの現金が流通していて、ATMの保守管理経費や現金の取り扱いに関する人件費だけでも年間約8兆円ものロスが生まれています。

そうした中、経済産業省は「キャッシュレスビジョン」を掲げ、2025年までにキャッシュレス比率を40%にまで引き上げる目標が設定されました。

こうした流れに続くように、近年は「◯◯pay」を謳った電子決済アプリが次々と登場するようになり、数百億円規模のポイント還元キャンペーンが実施されるなどキャッシュレス決済の熱はここ数年で一気に高まっています。

中でも世間の注目を集めているのが、LINEが運営する「LINE Pay」とソフトバンクの「PayPay」を代表とするQRコード決済。

この2つに共通するのは、いずれも金融機関ではないプレイヤーが新規参入したという点です。

両社は圧倒的なマーケティング投資を行うことで大規模かつ急速な会員獲得と加盟店開拓を成し遂げました。

なぜ彼らは巨額の投資をしてまで、QRコード決済の普及に力を注いだのでしょうか?

その背景にあるのは、時代がITからDT(データ・テクノロジー)へと移行し始めたことにあります。

決済データによって、顧客を「点」ではなく「面」で捉えられるようになる

決済データの活用

そもそも現金が抱える問題は流通にコストがかかることが挙げられますが、それ以上に大きなデメリットは、現金で決済が行われると「誰が」「どこで」「何を」「どんな頻度で」購入したのかというデータが残らないこと。

現金で取引を行う小売店では、レジのPOSシステムによってどの商品がいつ買われたのかという情報を収集しています。

POSシステムとは、「Point of Sale(買った時点)」の情報を得るシステムのことで、小売店はPOSシステムから得たデータを活用して将来の需要予測などに役立てています。これは現在も広く使われているシステムですが、収集できる情報は値段や数量など極めて限定的なのが弱点です。

その一方、決済がデジタルで行われることで顧客の性別や年齢、購入した商品、商品を購入する頻度、リピート率の高い顧客はどのような商品を好んで購入するのか、といった解像度の高いデータを収集できるようになります。

現金決済時には「何を買った」という「点」にしか過ぎなかった情報も、取引がデジタル化されることによって、顧客情報をより詳細に立体的に捉えることができるようになるのです。

そうすることによって、これまで誰彼構わず「新商品が出ました」と宣伝していたものが、一人一人の顧客に最適化された提案が可能になり、企業のマーケティング戦略としてデジタル決済によるデータ収集は必要不可欠なのです。

中国型イノベーションの起点になった決済データ。全てはQRコードから始まった

QRコード決済の様子

顧客情報の解像度を高めることで顧客に最適なソリューションを提供することができることはキャッシュレス決済のメリットの一つですが、それ以上に重要なことは、キャッシュレス決済で集まった消費データは次なるサービス展開の大きな足掛かりになるということ。

デジタル経済におけるイノベーションの中心地である中国では、数年前からデータは次の時代のガソリンと認識されており、実際ここ数年の中国の躍進を支えたのはキャシュレス決済でした。

LINEやソフトバンクなど日本のキャッシュレス決済は実は中国の先発企業の手法を参考にしたもので、中国企業を見ると日本のキャッシュレス業者が何をしようとしているのかが分かるかもしれません。

QRコードの誕生でモバイル決済が爆発的に普及した中国では、ECサービスやシェアリングエコノミーを始めとした新しいウェブサービスが人々の生活に普及するようになりました。この中にはアリババやテンセントなど日本でも馴染み深い企業が含まれています。

QRコード決済の普及に伴い、中国では莫大な決済情報がデータとして蓄積され、こうしたデータに基づき信用スコアや保険など新しいサービスが次々と誕生しました。

そして新しいサービスが誕生することで、そこにベンチャーファンドなどからの資金が世界中から集まり、蓄積したデータを活用する人工知能など、最先端分野のベンチャー企業が続々と誕生するようになります。

つまり、電子決済によって顧客のデータ蓄積→新サービスの誕生→さらなるデータの蓄積→次のサービスが誕生というサイクルが生まれたことで、中国は世界の先頭を走る独自のデジタル経済圏を形成して行ったわけです。

いよいよ日本でも決済データによるイノベーションが起きるのか

QRコードを起点にした日本企業のイノベーション

ここで話を日本のキャッシュレス決済に戻します。

現在QRコード決済を展開している各社はいずれも日本を代表するテクノロジー企業ばかりで、金融機関ではない彼らが決済事業に次々と新規参入するのは、次の時代を見据えた動きだということが分かります。

実際、各社が運営するQRコード決済は実店舗に限らず、様々なウェブサービスで使用することができ、点ではなく「立体的」な顧客理解に努めています。

こうして見てみると、普段何気なく使っているQRコードやニュースでよく耳にする電子決済に対する見方が少し変わるのではないでしょうか。

あなたが昨日コンビニで行ったQRコード決済は、私たちの暮らしをより便利にする未来のサービスの一要素として存在するのですから。

TEXT:セキュリティ通信 編集部
PHOTO:iStock

あなたの大切なパソコン・スマホを守ります!
世界が認める総合ウイルス対策ソフト

カスペルスキー

この記事を気にいったらいいね!しよう

セキュリティ通信の最新の話題をお届けします。

ページトップ