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GaaSで変わる社会

トピックス 2020.12.11 国民を「ユーザー」と捉えるサービスとしての政府、GaaSとは?

菅政権が誕生してからというもの、ニュースで仕切りに「行政改革」「ハンコ廃止」「縦割り打破」という言葉を耳にするようになり、政府のデジタル化に拍車がかかっているように感じる方も少なくないはずです。

実は日本政府が進めているのは単なるデジタル化ではなく、「サービスとしての政府を意味する「GaaS(Government as a Service)」の実現を視野に入れたものでした。

近年、よく見かけるようになった「◯aaS」という表現。トヨタ自動車もMaaS(サービスとしてのモビリティ)を掲げるようになりましたが、◯aaSの政府版であるGaaSは、国民をユーザーと捉えた政府のプラットフォーム化を目指す試みなのです。

プラットフォーム化というと難しく感じるかもしれませんが、これは自社でコンテンツを作るのではなく、外部の力を借りてサービスを展開することを意味します。

例えば、モビリティ業界で強い影響力を持つUberは車を一台も所有していませんし、ホテル業界を揺るがしたAirbnbに関しても客室を一室も保有していないように、プラットフォーム化というのは外部の力をテコに最小限のコストで大きなサービスを展開する手法を指します。

政府が全てを提供してくれる時代の終焉

サービスとしての政府

GaaSとはこれまで政府が提供していたコンテンツを外部の力を借りて展開しようとする試みなのですが、こうした試みが目指されるようになった背景には政府(サービス)が提供できるものと、国民(ユーザー)が求めるもののギャップが日に日に大きくなってきているからです。

経済や産業の主体が工業から情報産業へとシフトする中で、国民のニーズが多様化し始め、それに伴い政府が提供しなければならないサービスも多種多様になりました。

多様化したニーズに対して個別にきめ細やかく対応することが理想ですが、政府がその全てに対応することはコストを考慮すると現実的ではなく、結局のところ中途半端なサービスしか提供できません。

これは学校給食で例えると分かりやすいかもしれません。かつて同じメニューを生徒全員に過不足なく提供することが求められていた時代から、生徒ごとのアレルギーや好き嫌いを考慮しなくてはならない時代になったのです。

しかし、大きなキッチンで個別のニーズを一つ一つ対応すれば時間もコストもかかってしまい、持続可能な取り組みとして成り立たせることは難しいでしょう。

そこで考えられたのがキッチンと食材を提供して、生徒ごとの好みに合わせて「外部のコックさん」に調理してもらうことができる環境を整備すること。それがGaaSの本質です。

GaaS先進国インドの例から見えるオープンAPIの可能性

プラットフォーム化する政府

外部の力を借りる上で注目されているのがオープンAPIという概念。

APIとはソフトウェアの機能を他のプログラムから呼び出して使用する方法のことを指すのですが、自社システムのAPIを一般に公開することで、外部の企業がAPIを活用して新たなサービスを開発・提供することが可能になるのです。

ビジネスの世界ではすでに当たり前に使われているこの手法を政府に応用することで、企業が作ったアプリやプログラムを政府のデジタル基盤に簡単に連携させることができる仕組みを作ることができます。

GaaSを世界に先駆けて実現させたインドの取り組みを見てみると、その実態がイメージしやすいかもしれません。

インドは13億人の人口を抱えながら、民族、言語、宗教が多様な上に、経済格差も非常に大きく、銀行口座や身分証を持たない人々も多くいるなど、国民一人一人が求めるニーズは限りなく多種多様です。

政府のみでこうしたニーズに対応することは非常に困難であることからインド政府はオープンAPIを活用し、企業の参入を促す環境づくりを始めました。

そこで活用されたのが2009年に生まれたインド版マイナンバー「アドハー」です。

アドハーとは12桁の番号、指紋認証、そして網膜スキャン技術で構成されている国民識別番号のことで、2018年末の時点ですでにインド国民の90%に当たる12億人が取得完了しています。

インド政府はこのアドハーを使って本人認証などが行える「インディアスタック」と呼ばれるオープンAPIの仕組みを整備しました。

インディアスタックには主に5つのAPIが用意されており、国民認識番号の「アドハー」、本人認証の「eKYC」、電子署名の「eSign」情報保存の「Digital Locker」そして送金に使われる「UPI」と呼ばれるものです。

インドではこれらの分野の関連企業が続々と参入し、これまで政府が提供しきれなかった価値を提供するサービスを外部の企業が提供することで、人々の生活が便利になっています。

また、オンラインで本人認証が完了するため、これまでインドで浸透しなかった保険や金融商品などの市場が一気に開花することになりました。

終わりに

政府が統治者として全てを提供する時代は終わり、これからは国民(ユーザー)の生活を便利する企業の参入を促す「仕組み作り」が政府に求められる仕事なのかもしれません。

かつて国が道路を整備して、その道路に民間企業が自動車やバイクを走らせたように、これからはデジタル上のインフラを政府が作ってくことが求められる時代なのです。

政府が実現を目指すGaaSが浸透した時、私たちの暮らしは今とは比べ物にならないほど便利な社会になっていることでしょう。

【関連リンク】

・行政サービスをデジタル化する住民 ID 基盤 「 GaaS( Government as a Service )」を公開 石川県加賀市から全国へ向けてデジタル・ガバメントを推進(スマートバリュー)
http://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS80522/972b2a71/b4c7/4217/b978/36d0e79d6df2/140120190528437686.pdf

・METI DX(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/digital_transformation/index.html

TEXT:セキュリティ通信 編集部
PHOTO:iStock

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